こんにちは、TAZNです。今日はタロットリーディングの「ロケーショナル・ディグニティ」という技法をご紹介します。
ロケーショナル・ディグニティとは何か?
ロケーショナルとは「位置的な」、ディグニティとは「尊厳」という意味です。スプレッドの中の場所(ポジション)と、そこに登場したカードの関係によって、それらの尊厳が強まったり弱まったりする、という考え方です。
以前の記事でエレメンタル・ディグニティ、カード同士の元素の関係性によって意味の強弱を決める技法をご紹介しました(黄金の夜明け団のエレメンタル・ディグニティ、エレメンタル・ディグニティのバリエーション)。ロケーショナル・ディグニティも同じように関係性の中から意味を見出す技法ですが、こちらはカード同士ではなく、カードと場所の関係を見ます。
それっぽい場所にいるか、そうでないか
ロケーショナル・ディグニティを簡単に言うと、カードが「それっぽい場所に出たか、それっぽくない場所に出たか」を判断することです。相応しい場所に相応しいカードが出たなら、そのポジションとカードの意味は強められ、強調されます。逆に、相応しくない場所に出たカードなら、それらの意味を弱め合います。
人間と場所に例えてみましょう。着飾った貴族が炭坑の中にいたり、幼稚園児が高層ビルのオフィス街にいたりするのを考えると、あまり「相応しい場所にいる」というイメージは持てません。なんだか変な場所に紛れ込んでいるような、「ここでなにやってるの?」という感じを受けます。貴族は宮殿に、幼稚園児は幼稚園や家族の元にいるのが自然です。また、炭坑には炭鉱夫、オフィス街にはビジネスマンがいれば、人の価値も場所の価値も両方引き出すことができるでしょう。
このように「それっぽい場所にいるか、そうでないか」で判断するのがロケーショナル・ディグニティです。それっぽい場所にいればディグニティが良く、カードとポジションの意味が強まる。それっぽくない場所にいればディグニティが良くない、カードとポジションの意味が弱まる。
専門的な言葉では、ディグニティが良いことをウェル・ディグニティ、良くないことをイル・ディグニティと言います。また、ウェルやイルにも「完璧なウェル・ディグニティ」や「ちょっとだけイル・ディグニティ」などの強弱があります。
どうやって判断する?
ロケーショナル・ディグニティの判断には、主に二つの方法があります。
意味による感覚的な判断
帰属による機械的な判断
1番目は感受性に頼り、2番目は決められた規則性に基づいて判断します。順番に見ていきましょう。
1. 意味による感覚的な判断
これには厳密なルールがある訳ではありません。リーダーの感覚的な印象によって判断されます。
ポジションの意味と、カードの意味が、それぞれの役割を一致させているように感じればウェル・ディグニティ、ちぐはぐに感じるならイル・ディグニティです。
例えば、恋愛成就を占うスプレッドで「関係性」という意味のポジションがあったとします。ここに、そもそも関係性に関わるカード(恋人たち、カップの2や6など)が登場すると、ポジションの意味とカードの意味が一致し、ウェル・ディグニティと判断できます。
逆に、縁を切りたい人との関係を占ったとき。同じように「関係性」のポジションに恋人たちが出たら、「関係性」というポジションの意味と恋人たちの意味は一致していますが、このポジションに込められた期待(縁を切る)とは真逆のカードなので、イル・ディグニティだと言えます。
あるいはビジネスについての占いで、「結果」の位置にペンタクルの10が出た場合。ペンタクルの10は経済的・社会的な達成を示すカードで、この質問に込められた「結果」ポジションへの期待(経済的成功)と一致しています。これもウェル・ディグニティだと判断できるでしょう。
このように、ポジションの意味とカードの意味が一致しているかどうかだけでなく、質問の意図によってポジションに込められた期待にも一致しているかを確認することになります。
またグラフィカルな配置から感覚を得ることもできます。太陽や世界のカードがスプレッドのど真ん中にあったらそれっぽいと感じたり、中心に置かれたら恐縮してしまいそうなカードが真ん中だと、居心地悪いように感じる場合もあるかもしれません。ここからも、ウェルやイルを見つけることができるでしょう(「空間への感受性」でケルト十字の配置の意味を見直してみようの考え方も応用できそうです)。
こうした判断方法は、すでにごく普通の感覚で読み取られている方も多いかも知れませんね。恋愛成就の占いで関係性のポジションに恋人たちが出たら「メチャクチャよい!」と思うはずです。この感覚が、この判断方法におけるウェル・ディグニティです。
2. 帰属による機械的な判断
こちらは感覚的なものではなく、ルールに則ってシステマチックに判断する方法です。
帰属とは、カードやポジションに割り当てられた様々な属性のこと。数字、元素、占星術のシンボルとの対応などです。例えば、カップの2というカードには、まず数字の2が割り当てられています。そしてカップのスートなので水の元素が、占星術のシンボルでは蟹座第1デカンと、その支配星である金星が対応します。
ポジションの方の帰属はどうなるでしょうか。まず、そのポジションがスプレッド全体の中で何枚目に配置されるカードか、という数字が割り当てられます。あとはスプレッド次第ですが、例えばホロスコープ・スプレッドなどには、各ポジションに占星術的な帰属を考えることができます。
(タロットと占星術の対応についてはこちらの記事を:タロットと占星術の対応、いろいろ、黄金の夜明け団の小アルカナと占星術の対応)
占星術的な帰属によるロケーショナル・ディグニティは、スプレッドが限定されることと、それだけで一つ二つ記事が書けるくらい複雑なので、今回は省略します。ここでは数字の帰属について考えてみましょう。
数字の帰属による判断
カードとポジションが同じ数字の帰属を持っていれば、その数字が強調されることで、カードとポジションの意味が強まります。例えば、カップの2がスプレッド内の二枚目に引いたカードとして登場した場合です。
また、数字の原則をタロットリーディングで活用するで紹介した数秘術的な方法を当てはめて考えることができます。
例えば数字同士の相性では、ある数字は一つ前の数字を否定します。ポジションの数字が6、カードが7であれば、カードがポジションを否定している、というイル・ディグニティになります。
意味による感覚的な判断と合わせて考えることもできます。スプレッドの中の6番目、意味が「関係性」というポジションに、7の戦車のカードが登場したとすると、6の持つ相互交流の関係が、7の一方通行的なエネルギーの動きによって阻害されます。二人の間は力関係の偏りがあるか、一方通行的か、どちらかがこの関係性を否定して飛び出していこうとしているか、と読めます。
数字が一致しなくても、「最後のポジション/カード」という点で一致していればウェル・ディグニティと読むことができます。10枚のスプレッドの最後に、大アルカナの最後のカードである21世界が現れたら、お互い最後同士であるという強調を読み取れます。
帰属による機械的な判断は、「どのような帰属のシステムを採用するか」によって変わってきます。これはリーダーの中で選択されたり、作り上げられたりし、そこから関係性の法則も見いだされていくことになるでしょう。
食い違うディグニティがある場合は?
このように、ロケーショナル・ディグニティはいくつかの観点から見ることができます。あらゆる観点から見て、すべてのディグニティがよければ「完璧なウェル・ディグニティ」です。
ただ、観点によってウェルとイルの両方が見つかるときもあるでしょう。機械的な判断で見るとウェルなんだけど、感覚的な判断だとイルになる、というように。この場合はロケーショナル・ディグニティに葛藤がありますが、その葛藤そのものを、カードが示す現実の事象が孕む葛藤だ、と考えることができます。相殺してニュートラルになった、と読むこともできますが、現実的にはなんらかの葛藤と扱う方が詳細を読み解けるでしょう。
また、取り替え子のように、「このカードとこのカードは出るポジションが入れ替わっていた方が自然だったのに」と感じる場合もあるかもしれません。そこにも、なんらかのエネルギーのエクスチェンジやチェンジリングが起きている、と解釈できます。
ロケーショナル・ディグニティだけでは判断できない
ロケーショナル・ディグニティは、カードとポジションの関係を見ていく技法でした。しかしこれだけで判断する訳ではなく、カード同士の関係性にも大きく影響を受けます。他の関係性にも配慮しながら読んでいきましょう。
今回紹介できた範囲のロケーショナル・ディグニティは、ウェルでもイルでもそこまで強い影響力は持ちませんが、時には輝くばかりに鮮やかなディグニティを示す位置関係も見せるでしょう。ウェルなら良くてイルなら悪い、という考えに囚われることもありません。関係性があるところに物語あり、そのディグニティから物語が組み立てられることを目指しましょう。
歴史的なロケーショナル・ディグニティ
ロケーショナル・ディグニティという言葉は、エリザベス・ヘイゼルの著書「タロット・デコーデッド(2004)」で使われたものです。この本ではロケーショナル・ディグニティだけでなく、スプレッドの行間を読むための様々なディグニティ技法が掲載されています。
また、黄金の夜明け団にもこれに近い考え方があります。《開錠式》と呼ばれる複雑なタロット占術の中で、デッキを「火・水・風・土」の4つの山に分け、それぞれの山に出たカードとのエレメンタル・ディグニティを見る、という手続きがあります。これはポジションとカードの帰属から判断するロケーショナル・ディグニティと言えます。
参考文献
最近の活動
●「LittleLight-占う人のためのWEBマガジン」に記事を書かせていただきました。いとしの推し占術として「個性的なモダンタロット」をおすすめしています。いわゆる定番ではない個性的なデッキとどう付き合い、学んでいけばよいのか? ゾンビタロットを長年使う中で見つけたヒントを紹介しています。
●マイカレ秋号、満月・月食・天王星食のためのスプレッドにトライしてくださったみなさまありがとうございました! みなさんの、占星術的なイベントをタロットで読み解いてみたい、という意気が伝わってまいりました。
次は12/8に引くスプレッドが掲載されていますので、そちらもぜひどうぞ。
●11月下旬、ゾンビタロット2023年の運勢をリリース予定です。すでに「今年はいつから?」というお問い合わせを頂いております。もうしばらくお待ちください!
●12/7水19:30よりメアリー・K・グリーア「タロットワークブック」zoom読書会です。タロットサークル内の活動ですが、メンバー外の方で参加希望の方はお知らせください。本がない、英語版しか持っていない、途中参加の方もどうぞ。
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