タロットのリーディングには、黄金の夜明け団に由来する「エレメンタル・ディグニティ(元素の品位)」という技法があります。
これはカード同士の力関係を、カードに対応する四元素の関係によって決定する方法です。カードが他のカードの元素によって強められたり、弱められたりすることで、その意味も強まったり弱まったりする、と読みます。
今日は、黄金の夜明け団がエレメンタル・ディグニティをどう解説しているかについてご紹介したいと思います。
元素とカードの対応
まず、各カードが火・水・風・地のどの元素に対応しているのかを見ていきましょう。
小アルカナ
スートによって元素が割り当てられています。
ワンド:火
カップ:水
ソード:風
ペンタクル:地
これは今でも最も一般的に使われている対応ですね。
※コートカードの場合は、スートの元素に加え、4つの階級にも4つの元素が割り当てられています。例えばクイーンはどのスートでも水になり、カップのクイーンなら「水の水」、ワンドのクイーンなら「火の水」となります。この話は少しややこしいのと、エレメンタル・ディグニティにおいてはあまり考慮されていないようなので、今回は省略します。
大アルカナ
そのカードに対応する占星術シンボルから元素が決められます。
サインに対応するカードは、そのサインの元素に。天体に対応するカードは、その天体が支配するサインの元素に。また、直接元素そのものに対応しているカードもあります(地はなく、火、水、風のみ)。
愚者:風
魔術師:風、あるいは地(水星、支配サインは双子座と乙女座。双子座の風に対応させることが多いようですが、乙女座の地を採用する少数派もあります)
女教皇:水(月、支配サインは蟹座)
女帝:地、あるいは風(金星、支配サインは牡牛座と天秤座。多くの場合、地の対応が採用されています)
皇帝:火(牡羊座)
教皇:地(牡牛座)
恋人たち:風(双子座)
戦車:水(蟹座)
力:火(獅子座)
隠者:地(乙女座)
運命の輪:火(木星、支配サインは射手座)
正義:風(天秤座)
吊られた男:水
死:水(蠍座)
節制:火(射手座)
悪魔:地(山羊座)
塔:火(火星、支配サインは牡羊座と蠍座。蠍座の水にも対応しておかしくないようですが、そのように解説されることはほぼありません)
星:風(水瓶座)
月:水(魚座)
太陽:火(太陽、支配サインは獅子座)
審判:火(直接火に対応するカードですが、後年、冥王星と対応させられたため、支配サインである蠍座から水とされることもあります)
世界:地(土星、支配サインは山羊座と水瓶座。水瓶座の風に対応と考えることもできますが、そう解説されることはほぼありません)
※黄金の夜明け団の文書では、特に大アルカナについては「このカードはこの元素」とズバリ書いてある訳ではありません。後年の研究によってこのように解釈されてきました。そのためリーダーによって解釈の違いもあります。
※黄金の夜明け団は天王星、海王星、冥王星をカードに対応させていませんが、後年ポール・フォスター・ケースがこれらを愚者、吊られた男、審判と対応させました。また、現代の占星術ではこの3つの天体の支配サインを水瓶座、魚座、蠍座としています。それらによって起きた元素とカードの対応の解釈違いもあります。様々な占星術対応については以前の記事「タロットと占星術の対応、いろいろ」参照。
元素の相性
元素同士には相性が決められています。
同じ元素同士は大変強い
風と地、火と水は相克
風は水と火に対して友好的、火は風と地に対して友好的
表にするとこのようになります。(◎大変強い、○友好的、✕相克)
相関図にするとこのように。
この元素の相性に基づき、カード同士の強弱を見ていくことになります。
熱・冷・乾・湿の特質
四元素のそれぞれには、熱いか冷たいか、乾いているか湿っているかという特質が決められています。
火:熱、乾
水:冷、湿
風:熱、湿
地:冷、乾
相性のルールは、この2つの特質をどれだけ共有しているかによって決められています。2つの特質両方が共通している同士なら強い、どちらか片方だけが共通しているなら友好的、共通するものがなければ相克、という関係です。
例えば、「熱、乾」の火は、「冷、湿」の水とは共通する特質がないため相克。「熱、湿」の風とは「熱」が共通なので友好的です。
エレメンタル・ディグニティによるカードの読み解き方
あるカードを見るとき、両隣にあるカードとの3枚組とし、両隣のカードから中央のカードへどのような影響があるかを読み解きます。
以下で言う「強まる」「弱まる」とは、中央のカードの意味を強める、弱める、ということです。吉の意味だろうが凶の意味だろうが、それが強まったり弱まったりします。
同じ元素が両側にあれば、大変強くなる
例:中央が火、両隣2枚も火
両側に中央と相克する元素があれば、大変弱くなる
例:中央が火、両隣が2枚とも水
一方の隣が中央と相克する元素でも、反対隣が他2枚ともに対して友好的なら、友好的な元素が相克するもの同士を連結・修正し、両カードの影響によって弱められずかなり強くなる
例:中央が火、左が水の相克する関係でも、右が風なら、風は火と水の両方に友好的なので、中央の火は強まる
両隣が相克の関係であれば、中央のカードは両者に影響されない
例:中央が火。左が風、右が地なら相克の関係。中央の火はどちらからも影響を受けない
図にすると、このようになります。
2枚のカード同士の場合は、2枚が同等の力を有すると想定し、相克する2枚なら互いに弱め合います。
元素のその他の特質
黄金の夜明け団の文書では、他にも元素の特質が書かれています。タロットリーディングに応用できるかわかりませんが、参考資料としてあげておきます。
元素特質表
火:熱、乾、過剰な軽さ、輝き、過剰な精妙さ、運動、迅速
風:熱、湿、軽さ、かすかな曖昧、精妙さ、過剰な運動
水:冷、湿、重さ、曖昧、堅牢、運動
地:冷、乾、過剰な重さ、過剰な曖昧、過剰な堅牢、休息
混合元素特質表
火&水:わずかな重さ、若干の精妙、強烈で迅速な運動
火&風:大いなる熱、強い軽さ、わずかな輝き、強い精妙、強い運動
火&土:大いなる乾、わずかな曖昧
水&風:大いなる湿、強い運動
水&地:大いなる冷、強い重さ、強い曖昧、強い堅牢
風&地:若干の重さ、強い曖昧、堅牢なし、運動なし
どうやって使っていくか?
エリザベス・ヘイゼルは、エレメンタル・ディグニティを「鉄のルールではなく、隣人間の柔軟なダイナミクス」だと理解するよう推奨しています(『TAROT DECODED』)。
また、アンソニー・ルイスは「四大元素のディグニティを使うかはリーダーの性格により変わる。数学的な分類法を楽しめるリーダーもいれば、負担に感じもっと直観的に行いたいと感じるリーダーもいる」と書いています(『タロット事典』)。採用する、しないはリーダーの自由です。
今回ご紹介したのは、黄金の夜明け団のオリジナルの考え方です。採用する場合、このままリーディングに活用してもいいし、アレンジしていってもよいでしょう。現に、様々な著者によって元素の関係性のバリエーションが生まれています(これはいずれ、まとめてご紹介したいと思っています)。
自分も、黄金の夜明け団のルールそのままではありませんが、エレメンタル・ディグニティはリーディングにかなり活用しています。
『ユリイカ タロットの世界』掲載のメアリー・K・グリア「アベイ座のタロット・リーディング」では、黄金の夜明け団メンバーであったアニー・ホーニマンによる実際のリーディングが紹介されており、そこにもエレメンタル・ディグニティの技法が使われています。ご参考に。
その他の参考文献:
黄金の夜明け団のエレメンタル・ディグニティは、アリストテレスの考え方もルーツの一つになっています。詳しくは以前の記事「アリストテレスは四元素と熱・冷・乾・湿についてなんと言っているか?」も参照。
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