タロットと占星術の対応、いろいろ
タロットの各カードを、占星術のサインや天体と対応させる考え方があります。いろんな人が多様な対応システムを考案してきました。
今回はそのなかから8つのシステムを紹介します。これで全てではありません。一般的によく解説されるのは、主に黄金の夜明け団のシステムです。でも、そのほかにもこれだけの対応があるんだ、とタロットについての考えの多様性を感じてもらえれば幸いです。
黄金の夜明け団
これは現在、最も有名なタロットと占星術の対応です。ウェイト=スミス版やトートタロットもこのシステムをベースに作られました。特にトートタロットは絵との整合性も高く、占星術記号もカードに記されています。
黄金の夜明け団
牡羊座:皇帝
牡牛座:教皇
双子座:恋人たち
蟹座 :戦車
獅子座:力
乙女座:隠者
天秤座:正義
蠍座 :死
射手座:節制
山羊座:悪魔
水瓶座:星
魚座 :月太陽 :太陽
水星 :魔術師
金星 :女帝
月 :女教皇
火星 :塔
木星 :運命の輪
土星 :世界
天王星:愚者*
海王星:吊られた男*
冥王星:審判*火 :審判
水 :吊られた男
空気:愚者
土 :-*の外惑星対応は、後年ポール・フォスター・ケースにより追加
黄金の夜明け団はイギリスの魔術結社です。タロットをヘブライ文字、カバラ、占星術などと組み合わせ、一大魔術体系を編み上げました。
その際、どうしても整合性が取れなかったカードの順番が変更されています。それまでのマルセイユ版での8=正義、11=力が、8=力、11=正義へと。これはそれぞれ天秤座と獅子座に対応するカードです。「天秤座に力(獅子の描かれたカード)が、獅子座に正義(天秤の描かれたカード)が対応するのはどう考えても逆でしょう」という変更です。他のヘブライ文字やカバラの体系と関連付けるには、どうしてもこの2枚をそこに置くしかなかったのです。
その後のタロットの歴史に大きな影響を与えたこの変更は、占星術と対応させたときの違和感から行われたものです。
エリファス・レヴィ/ポール・クリスチャン/パピュス
黄金の夜明け団よりもう少し時代を遡ります。エリファス・レヴィはフランスでヘブライ文字、カバラ、タロットなどを組み合わせて魔術体系を作り上げました。ポール・クリスチャン、パピュスもタロットの理論家で、レヴィと同じ占星術対応を使っています。彼らのシステムは黄金の夜明け団にも影響を与えましたが、占星術対応は別物です。
レヴィ/クリスチャン/パピュス
牡羊座:教皇
牡牛座:恋人たち
双子座:戦車
蟹座 :正義
獅子座:隠者
乙女座:運命の輪
天秤座:吊られた男
蠍座 :節制
射手座:悪魔
山羊座:塔
水瓶座:月
魚座 :太陽太陽 :世界
水星 :星
金星 :女帝
月 :女教皇
火星 :力
木星 :皇帝
土星 :審判火 :愚者
水 :死
空気:魔術師
土 :-
金星=女帝、月=女教皇の対応以外は、すべて黄金の夜明け団と異なります。12サインは牡羊座=教皇からはじまり、天体に対応するカードを除けばだいたい番号順に並んでいきます。
エテイヤ
さらに時代を遡りましょう。エテイヤは最初のタロット占い師と言われている、フランスの人物です。はじめてタロットと占星術を対応させた人物かもしれません。エテイヤのタロットはナンバリングが特殊なので、番号も一緒に記します。
エテイヤ
牡羊座:1教皇
牡牛座:2太陽
双子座:3月
蟹座 :4星
獅子座:5世界
乙女座:6皇帝
天秤座:7女帝
蠍座 :8女教皇
射手座:9正義
山羊座:10節制
水瓶座:11力
魚座 :12吊られた男太陽 :コインのA
水星 :コインの2
金星 :コインの3
月 :コインの4
火星 :コインの5
木星 :コインの6
土星 :コインの7
ドラゴンヘッド:コインの8
ドラゴンテール:コインの9
POF :コインの10火 :2太陽
水 :3月
空気:4星
土 :5世界
ナンバリングが特殊とは言え、シンプルに1〜12のカードが12サインに対応。また天体や感受点はすべてコインの数札。ドラゴンヘッドやテール、パート・オブ・フォーチューンがあるのも特徴的です。牡羊座=教皇がレヴィのシステムと共通します。
オズヴァルト・ヴィルト
ヴィルトもフランスで魔術体系をまとめた人です。パピュスと同時代の人ですが、もう少し後にシステムを本にしました。
ヴィルト
牡羊座:教皇
牡牛座:魔術師
双子座:太陽
蟹座 :月
獅子座:力
乙女座:女帝
天秤座:正義
蠍座 :塔(神の家)
射手座:恋人たち(恋する男)
山羊座:運命の輪
水瓶座:節制
魚座 :星
天体に対応するカードはありません。他のカードは12サイン以外の星座などに対応します(ここでは省略)。牡羊座=教皇は、エテイヤやレヴィと共通ですが、他はまた全然違います。
太陽には二人の子供がいるから双子座、節制は水瓶を持っているから水瓶座など、わかりやすい対応も多いですね。力と正義も、絵のイメージのまま獅子座と天秤座に当てられています。
C.C.ザイン
ザインはアメリカで光の兄弟団(後に光の教会)を設立し、オカルトサイエンスのレッスンを広めました。日本の黎明期のタロットリーダーにも強い影響を与えています。ザインのタロットはエジプト風にアレンジされ、一部名前も違うため、かっこで追記しました。
ザイン
牡羊座:死(刈り取り人)
牡牛座:節制(錬金術師)
双子座:星
蟹座 :月
獅子座:太陽
乙女座:女教皇(ヴェールを被ったイシス)
天秤座:女帝(ヴェールを剥がれたイシス)
蠍座 :皇帝(君主)
射手座:戦車(征服者)
山羊座:正義(天秤)
水瓶座:隠者(賢者)
魚座 :吊られた男(殉教者)太陽 :世界(熟達者)
水星 :魔術師(術士)
金星 :恋人たち(二つの道)
月 :審判(石棺)
火星 :塔(稲妻)
木星 :教皇(祭司)
土星 :悪魔(黒魔術師)
天王星:運命の輪(輪)
海王星:力(女魔法使い)
冥王星:愚者0(唯物論者)
地球 :愚者22(唯物論者)
天体には地球もあります。愚者のナンバリングを0とする場合は冥王星、22なら地球です。水星=魔術師、火星=塔は黄金の夜明け団と共通。金星が恋人たち、土星が悪魔などはしっくり感があります。
12サインはレヴィのように、天体に対応するカードを除けば番号順ですが、乙女座から始まります。
A. E. ツィエレン
ツィエレンはオランダの占星術家。オランダ現代占星術協会の創立者です。著書にはA. E. ウェイトも序文を寄せています。あまり馴染みのない人物ですが、おもしろい対応なので取り上げます。
A. E. ツィエレン
牡羊座:魔術師
牡牛座:女教皇
双子座:女帝
蟹座 :皇帝
獅子座:教皇
乙女座:恋人たち
天秤座:戦車
蠍座 :正義
射手座:隠者
山羊座:運命の輪
水瓶座:力
魚座 :吊られた男太陽 :太陽
水星 :節制
金星 :星
月 :月
火星 :悪魔
木星 :審判
土星 :死
天王星:塔
海王星:世界
地球:愚者
12サインは、大アルカナの1〜12が順番通り対応。ナンバリングは違うものの、エテイヤと同じく数秘術的に割り切った対応です。松村潔先生の本にも近い考え方かも。太陽=太陽、月=月と、ライツは二つともストレートに対応。土星=死、天王星=塔も、言われてみれば。冥王星への対応は時代的にまだありません。代わりにザインと同じく地球=愚者です。
ツィエレンのシステムは、小アルカナも独特のらせん構造対応を持っています。今回は他のシステムでも小アルカナは省略しましたが、機会があればまたいずれ。
イーデン・グレイ
さらに時代が下ります。グレイはアメリカのタロットリーダー、現代タロットの母とも言える存在です。オカルトタロットからニューエイジへ。
グレイ
牡羊座:太陽
牡牛座:教皇
双子座:恋人たち
蟹座:節制
獅子座:力
乙女座:隠者
天秤座:正義
蠍座:審判
射手座:戦車
山羊座:悪魔
水瓶座:星
魚座:月太陽:吊られた男
水星:魔術師
金星:女帝
月:女教皇
火星:塔
木星:皇帝
土星:死星雲:愚者
黄道十二宮:世界四大元素:運命の輪
基本的には黄金の夜明け団に近いですが、牡羊座=太陽、蟹座=節制、蠍座=審判、木星=皇帝、土星=死などの変更もあります。また愚者=太陽系軌道外にある星雲、運命の輪=四大元素のすべて、世界=12サインのすべてを表します。
南米でよく使われているもの
これはアンソニー・ルイス「タロット 基本のリーディング大全」で紹介されたものです。おそらく、1992年発行のスペイン語の占星術雑誌「Predicciones」からの転載ですが、この対応を考えたのが誰かはわかりません。南米と言ってもスペイン語圏、ポルトガル語圏といろいろありましょうが、珍しいので紹介します。
南米でよく使われているもの
牡羊座:世界
牡牛座:魔術師
双子座:恋人たち
蟹座 :女教皇
獅子座:教皇
乙女座:星
天秤座:正義
蠍座 :悪魔
射手座:運命の輪
山羊座:戦車
水瓶座:節制
魚座 :吊られた男太陽 :太陽
水星 :審判
金星 :女帝
月 :月
火星 :力
木星 :皇帝
土星 :隠者
天王星:塔
海王星:愚者
冥王星:死
ありそうでなかった冥王星=死。海王星=愚者も、初めて登場しましたがなるほどです。太陽=太陽、月=月はツィエレンと同じ。エテイヤ、ザイン、ツィエレンと共通する、魚座=吊られた男。12サインが世界から始まるのも力強さを感じます。
ちなみに、これとは違う南米で作られた対応も確認しています。ロナルド・デッカー&マイケル・ダメット「オカルトタロットの歴史」を参照。
一覧表
ここまでの8つの対応をまとめました。こういった表で、複数の対応を各カードごとにまとめたものはよくあります。でも、サイン/天体ごとにまとめたものはなかったので、そのようにしてみました。
こうして並べると、復数のシステムに共通している対応もあります。例えば金星=女帝、天秤座=正義、魚座=吊られた男は4つのシステムが採用。3システムに共通するものには、牡羊座=教皇、双子座=恋人たち、獅子座=力、太陽=太陽、水星=魔術師、月=女教皇、火星=塔、木星=皇帝などがあります。
逆に、蠍座などは全部バラバラです。
復数のシステムに採用されているから有力…なんてことはまったくありません。単に並べてみたときの発見として取り上げてみました。
これをどう使えばいいのか?
タロットと占星術はもともとまったく別のシステムです。1対1対応をさせていくと、必ずどこかに無理が生じます。そのため、この中のどれが正解、というものはありません。
ただ、先に占星術との対応システムを作り、それに合わせてデザインされたデッキもあります。そういったデッキを使用する場合は、それにあった対応システムを使うとスムーズでしょう。
あるいはデッキ作者の意図を超え、「私はこのシステムを採用してみる」と仮定して特定の対応を選んでみることもできます。そして「なぜこのカードはこの占星術の要素と対応するのか?」を一枚一枚考えていくと、タロットのシンボルと占星術のシンボルの間に共感関係のラインがつながり、シンボルを扱うときのトレーニングになります。
またはこれらを参考に、自分の使うデッキと照らし合わせながら、自分なりの対応システムを作ることもできます。その作業は、あなたがシンボルを扱う能力を強化してくれます。
今回紹介した対応を作った人々も、「このカードは占星術の何と対応させるべきか」あれこれ頭を悩ませたはずです。シンボルとシンボルの共通点を探し、説得力のある説明を考え、シンボルを扱うための感受性を強化していったはずなのです。
例えば、カードのザリガニをカニと見立てて蟹座=月と納得する。あるいは沖縄の民謡「カニを捕まえて、姉である十五夜の満月に差し上げる」という歌を思い出し、蟹座を月と対応させてもいい。あるいは古代日本の「蟹守」(海に建てた産屋にて、出産中カニを箒ではく役職)に思いをはせ、妊娠に関わる女帝と蟹座を結びつけてみる。獅子座の支配星は太陽だから、太陽のカードと対応させる。無意識とつながる海王星を、意識的に行動しない愚者と。など、など、など…。
必ずしも、カードと占星術シンボルをイコールで結びつける必要もないでしょう。「蟹座的な戦車」のように、どちらかのシンボルを形容詞として使い、もう一方のシンボルを考えてみるだけでも十分です。蟹座的なカラーを帯びた戦車とはどんなもの?といったように。
参考文献とその他の情報
Stuart R. Kaplan, THE ENCYCLOPEDIA OF TAROT Vol. 1 には、他にもT. Basilide, Ely Star, Georges Mucheryなどによる対応が掲載されている。
ロナルド・デッカー&マイケル・ダメット「オカルトタロットの歴史」には、他にも様々なヴァリエーションが紹介されている。
Ronald Decker, Thierry Depaulis and Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards
Mary K. Greer “Tarot and Astrology”, The Mountain Astrologer April/May 1997 Issue #72
C.C.Zain, THE SACRED TAROT
Paul Foster Case, the TAROT A Key to the Wisdom of the Ages
A.E.Thierens, General Book of the Tarot
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