こんにちは、TAZNです。
以前、こちらの記事で大アルカナと占星術の対応システムをいろいろ紹介しました。
今回は小アルカナと占星術の対応について紹介します。これもいろいろなシステムが考案されていて一つではないのですが、一つ説明するだけでもかなり複雑になるため、今日は一番メジャーな黄金の夜明け団のシステムについてのみです。
このシステムでは小アルカナのカードを3つに区分します。
エースとペイジ:4つの季節に対応
2〜10の数札:36のデカンに対応
キング、クイーン、ナイト:サインとサインの連結に対応
この3つのグループを順番に見ていきましょう。
エースとペイジ:4つの季節
この2枚のカードはセットになります。12サイン全体を4分割し、ぞれぞれに3つのサインが割り当てられます。
各四半期はこのような対応です。
ペンタのエース&ペイジ:春(牡羊座、牡牛座、双子座)
ワンドのエース&ペイジ:夏(蟹座、獅子座、乙女座)
カップのエース&ペイジ:秋(天秤座、蠍座、射手座)
ソードのエース&ペイジ:冬(山羊座、水瓶座、魚座)
エレメント(火・地・風・水の四元素)ごとに色分けして図にすると・・・
エース&ペイジのスートは、 対応する3サインのうち中央のものとエレメントが揃う、という法則が見えてきます。例えばペンタクルのエース&ペイジは、対応する牡羊座、牡牛座、双子座の3つのサインのうち、中央にある牡牛座と地のエレメントで一致します。
黄金の夜明け団はエースを「各元素の四階級において作用する《霊》の力。宇宙の北極に位置し、そこで回転しつつ宇宙の回転をも統御」するとし、他の数字カードとは特別視しています。ペイジはエースの座を作ります。
2〜10:デカンに対応
デカンとは、一つのサインを3分割したものです。1サインは30度あるので、一つのデカンは10度ずつ。12サイン✕3デカンで合計36のデカンがあります。2〜10の9枚✕4スートも合計36枚になるので、一枚が一つのデカンに対応します。
この対応は以下のルールで決められます。
スートはサインのエレメントに対応
ワンド:火のエレメント(牡羊座、獅子座、射手座)
ペンタ:地のエレメント(牡牛座、乙女座、山羊座)
ソード:風のエレメント(双子座、天秤座、水瓶座)
カップ:水のエレメント(蟹座、蠍座、魚座)
数字はサインのモダリティとそのデカンに対応
モダリティとは、活動宮・固定宮・柔軟宮の三区分のことです。
2、3、4:活動宮(牡羊座、蟹座、天秤座、山羊座)の第1〜3デカン
5、6、7:固定宮(牡牛座、獅子座、蠍座、水瓶座)の第1〜3デカン
8、9、10:柔軟宮(双子座、乙女座、射手座、魚座)の第1〜3デカン
例)ワンドの3:ワンドは火のサイン。3は活動宮の第2デカン。火の活動宮は獅子座なので、ワンドの3は獅子座の第2デカンに対応するカードとなります。
この二つのルールを図にしてみると・・・
一つのエース&ペイジが対応する3サインを通して、エレメントが変わりながらも2〜10の数字が順番に並んでいるのがわかります。各四半期の3つのサインは、活動宮・固定宮・柔軟宮の順番で1セットになっているのです。12サインを通して数字のサイクルが4回繰り返されているとわかります。
さきほどのエース&ペイジの法則は、対応する3サインのうち固定宮とエレメントが揃う、と言い換えることもできます。
デカンの支配星
各デカンには一つずつ支配星が当てられており、各カードにも天体が対応します。これは古典占星術で使われた7つの天体が使われます。
牡羊座第1デカンから「♂→☉→♀→☿→☽→♄→♃」の順番に割り当てられていき、また♂から繰り返されます(この天体の順番は占星術で「カルデアン・オーダー」と呼ばれています)。
例えば、牡羊座第1デカンのカードはワンド2なので、このカードには♂が対応します。続いてワンド3には☉が、ワンド4は♀、次の牡牛座に行くとペンタ5が☿、ペンタ6が☽…と続きます。
(このカルデアン・オーダーによるデカンの支配星の割り当ては、古典占星術で使われるものです。現代の西洋占星術では別の割り当て方法もあります。)
これも図に書き込んでみましょう。
36のデカンは7天体で割り切れないため、最後の魚座第3デカンは最初と同じ♂で終わります。つまり、魚座と牡羊座の切り替えでは♂が連続することになります。これは季節で言うと冬から春へ切り替わる頃。黄金の夜明け団では♂が連続する理由を「冬の長い冷気を克服し、春を始めるには大いなるエネルギーが必要とされるから」と説明しています。
キング、クイーン、ナイト:サインとサインの連結
ペイジを除く3種類のコートカードは、1枚につき3つの連続するデカンに対応します。しかしこの領域は二つのサインをまたぐ形になっています。あるサインの最終デカンと、次のサインの第1、2デカン、という3デカンです。黄金の夜明け団はこれらのコートカードを「サインの間の連環となる」ものだと言っています。
対応は以下のルールによって決められます。
スートはサインのエレメントに対応
ワンド:水→火
ペンタ:火→土
ソード:土→風
カップ:風→水
ランクはサインのモダリティに対応
クイーン:柔軟宮→活動宮
ナイト:活動宮→固定宮
キング:固定宮→柔軟宮
例)カップのナイト:カップなので風→水、ナイトなので活動宮→固定宮。すなわち、風の活動宮(天秤座)→水の固定宮(蠍座)となります。天秤座第3デカンから蠍座の第1、2デカンまでに対応します。
これも図にしてみましょう。
キング、クイーン、ナイトは二つのサインを連結しています。これらは、サインのエレメントやモダリティを切り替える力を持ったカードだ、と言えるかもしれません。ワンドのコートカードは水を火に切り替える力を持つ、クイーンは柔軟宮を活動宮に切り替える力を持つ、というように。
(黄金の夜明け団はコートカードのランクの名称を変更していますが、ここでは現在一般的な名称とランクの対応で記載しています。解釈には諸説あります)
これで、小アルカナのカードがすべて占星術のシンボルに対応しました。
大アルカナも含めた対応図
大アルカナのカード(各サインに対応するカード、各サインの支配星に対応するカード)も含めて図にすると、このようになります。これで、タロットのすべてのカードが占星術と対応します。
(天王星:愚者、海王星:吊られた男、冥王星:審判については、後年ポール・フォスター・ケースにより追加された対応を使用しています。黄金の夜明け団のオリジナルではこの3つの天体は使用されず、この三枚はエレメントに対応していました。火:審判、水:吊られた男、風:愚者)
ここで紹介したのは、単なる法則でしかありません。このシステムを活用するためには、「なぜ、このカードはこの占星術シンボルに対応しているのか? その二つを結びつけることにより、お互いにどのような意味を発し始めるのか?」と考えて、あなたの感受性の中で息を吹き込んであげる必要があります。
厳密さを期すための補足:トロピカル方式とサイデリアル方式
(ここから先は重箱の隅をつつくような内容なので、読まなくても大丈夫です)
占星術では、十二宮の基点をどこにするかにいくつか方式があります。
トロピカル方式:一般的な西洋占星術で使われている、季節に基づく黄道十二宮。春分点を牡羊座0度とし、そこを基点にして十二宮を始めます。春分点は歳差運動により毎年わずかに移動しているため、十二宮全体がだんだん実際の星座からズレていきます。サインと季節は同調しますが、天空にある実際の星座からは毎年後退し、72年に約1度のズレが生じます。
サイデリアル方式:インド占星術で使われている、実際の天空にある星座を基点とする黄道十二宮。サインとその名前のもとになった星座は一致するが、サインと季節は毎年ズレていきます。どこを十二宮の基点とするかはいろいろな見解があります。
黄金の夜明け団では、まず入団初期のメンバーには一般的なトロピカル方式が教えられ、より階位を上げたメンバーには「真の秘伝」としてサイデリアル方式が伝授されました。後者ではしし座のレグルス(「獅子の心臓」「貴公子の星」と呼ばれる)を獅子座0度とし、ここを十二宮の基点としています。
デカンの支配星のところで説明したカルデアン・オーダーとは、実際には7つの内の最も遠い天体から始まり、最も近い天体へと進む順番です。つまり、一番遠い星の♄から、一番近い☽にかけてです(♄→♃→♂→☉→♀→☿→☽)。古典占星術で牡羊座第1デカンが♂から始まるシステムは、♄から始まるカルデアン・オーダーとしては少しイレギュラーだと言えます(が、なにか占星術の歴史の中で理由があるのかもしれません…)。
黄金の夜明け団は獅子座0度を十二宮の基点としたため、獅子座第1デカンの支配星である♄から、スムーズにカルデアン・オーダーを始めることを可能にしました(とはいえ、魚座と牡羊座のつなぎめで♂が連続するイレギュラーは残るのですが)。
現代のタロットリーダーが、黄金の夜明け団流の対応システムを使用するとき、トロピカル方式とサイデリアル方式のどちらを採用しているのでしょうか? 諸氏様々ではあるでしょうが、おそらく基本的には一般的なトロピカル方式を採用していると思われます。自分もトロピカル方式で考えています(サイデリアル方式で考えると頭が混乱しそう)。アンソニー・ルイス「タロット事典」では、この二つの方式の両方を採用、解説されています。
参考文献
イスラエル・リガルディー編「黄金の夜明け魔法大系 〈1〉黄金の夜明け魔術全書 上」 「黄金の夜明け魔法大系 〈2〉黄金の夜明け魔術全書 下」
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前回はイヤーカードのサイクルについてかなりいろいろな新発見があり、これは2023年の運勢に盛り込めるのではないかと考えています。
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