こんにちは、TAZNです。
今回は、最近入手した新しいデッキのレビューをしたいと思います。あまり新しいデッキを買わない方なので、デッキレビューは初めてです。
またそのデッキに向き合うために考えた「夢でタロットにアプローチするワーク」と、古事記スプレッド第3弾をお届けします。
カーン&セレニック「ドクター・ファルケのタロット・オブ・ザ・ドローニング・ワールド」
アーティスト、カーン&セレニックによる実写のマルセイユ系デッキ。真上から撮影された池の水面に、たくさんの果実、野菜、花、葉が浮かんでいます。この自然の恵みはデッキの主役であり、コロナ禍にアーティスト本人が作ったワイルドガーデンで収穫されたものです。
また人の手で作られた人形やオブジェ、仮面や、動物たちの姿も見えます。アンティークのチャパティ麺棒、このプロジェクトのために作られたデルフト焼きのゴブレット、ブルガリアの小麦用鎌、プレス成形のビスケットは、ワンド/カップ/ソード/コインのスートに対応します。
そして大アルカナには、それぞれのカードに対応する人物が浮き沈みします。その姿は眠っているか、死んでいるか、花に飾られ弔われているかのように見える……。デッキの名前は「TAROT of the DROWNING WORLD(溺れた世界のタロット)」、大洪水のあるタイムラインを描いています。気候変動による海面上昇の危機と、コロナの危機、そして生命史上第六の絶滅に瀕した、我々の時代のアポカリプスに向き合って作られたデッキです。
デッキ解説書を書いたサラ・フォークナーによれば、洪水は破壊であると同時に創造であり、多くの神話ではしばしばその両方を兼ね備えた再生です。収穫の豊かさと、死を感じさせる人々の姿は、世界の創造と終わりが対立項ではなく、スペクトラムなのだと告げています。
フォークナーはこのデッキを占い以外にも、不規則になっていく気候のため、シャッフル可能・ダウジング可能な新しいルーズリーフ風の暦として使用することを提案します。秩序ある一年のための暦ではなく、特定の苦悩に対応するための、個人的でその場限りに用意されたカレンダーとして。
また、世界のカードの後ろには、新しく5枚の「従属しない(Insubordinate)アルカナ」が追加されています。これは緊急事態にある現代のための緊急アーキタイプとして考えることができる、と言います。
どのように向き合ったか
実はデッキのことをよく知らずに(名前もよく見ないで)購入し、届いてから大洪水という世界観を知って驚きました。でも、よく考えるとアポカリプスという点ではゾンビタロットと共通点があり、よくぞ自分の手元に……!という気持ちです。
大アルカナの人物たちはほとんどが眠っている、あるいは死んでいるように見え、なにかを語りだすというより沈黙を感じます。すべての人々が、それぞれの物語の終着点にたどり着き、そこに留まっているようです。彼ら、彼女らの声を聞くには、表面的なことから読み取るのではなく、その眠りの中に入っていく、もしくは生きていた頃のことを思い出すしかないように感じました。
また実写であるため、それぞれの人物に生生しさがあり、この人々を象徴や元型として取り扱うのにも抵抗を感じます。メアリー・K・グリア著「タロット・ミラーズ」では、タロットカードはあなたを映す鏡だ、と書かれています。しかしこのデッキの場合、自分の鏡として彼らを使うより前に、自分が彼らの鏡となってそのライフストーリーを感じ取らねばならない、と思いました。
しかし、またもや実写の生生しさから、この人々のライフストーリーを自分勝手な想像ででっちあげる訳にもいかない、とも感じました。眠っている人、死んだ人を前にして、その人の人生を捏造するような無礼さです。グリアさんの「カードの中に入る」ワークでは、アクティブ・イマジネーションでカードのビジュアルの世界に入っていき、そこでの体験を通じてカードを理解します。でもこのデッキにはこのメソッドもちょっと違う気がしました。
そこで今回は、夢を通じてカードにアプローチすることにしました。みなさんもご自身のデッキで行うことができるよう手順を次にまとめましたので、興味のある方はトライしてみてください。
参考リンク:
Kahn & Selesnick アーティストのサイト。ショップあり。
Chronogram / Kahn & Selesnick's "Tarot of the Drowning World" デッキについての記事。制作風景も。
夢でタロットにアプローチするワーク
このワークは、なにかを占うためのものでも、あなたの自己分析をするためのものでもありません。デッキとそのカードを理解し、親密さを作るために行うものです。そのため、新しく手に入れた、まだ慣れていないデッキと一緒に行うのに適しています(もちろんすでに馴染んだデッキとやってみても構いません)。いわゆる伝統的なデザインではない、現代的で独創的なデッキで行い、その特有の声を知るためにも優れた方法です。
一晩につき、一枚のカードについて夢でヒントを見ると決めます。フルデッキで行う場合は最低78晩、大アルカナだけなら22晩かかるワークです。ひとまず大アルカナだけに絞ってもよいでしょう。あるいは、気になるカードだけ単発で行うこともできます。
毎晩やらなくてもいいし、あらかじめ計画を立てなくてもよく、途中で方針を変えたりやめたりしても構いません。夢はコントロールしにくいものですから、ワークそのものの進行も無理にコントロールしようとしなくてよいのです。数枚のカードと行うだけで十分な場合もあります。もちろん、毎晩やりたい、全カードやりたいならぜひそうしてください。
1.寝る前に1枚のカードを選びましょう
その晩のワークに使うカードを選びます。選び方にはいくつか方法があります。
デッキ購入時の並び順に。大抵は0の愚者からはじめ、21の世界に向けて。小アルカナも行う場合は、大アルカナに続けてこれも順番に。
毎晩、気になるカードを自分で選択する。
毎晩、シャッフルしてランダムに一枚引く。寝る前にカードを見てもいいし、朝起きるまでなんのカードか知らないままでも構いません。(もし寝る前に見る場合、以前すでにワークしたカードなら引き直してもいいし、まだなにか情報を持っているとみなして再度同じカードで行ってもOKです。朝まで見ない場合は重複の可能性がありますが、それは必要だから行ったことだと考えます)
今回、TAZNはランダムに一枚引き、朝までなんのカードを引いたか見ないことにしました(ゾンビタロットでやったときは、購入時の並び順で行いました)。
2.選んだカード1枚を枕の下に入れます。ただし……
ただし、カードかあなたのどちらかがそれを嫌がった場合、そうしなくて構いません。寝相が(相当に)悪ければカードが折れるかもしれないし、梅雨時などは布団や枕の湿気がカードに移る危険もあります(これは自己責任でお願いします)。
あなたがそれを「良し」としたとして、カードがそれを嫌がっているかどうかを知るため、いくつか方法があります。必要なら両方を組み合わせて行ってください。
そのデッキにイエス/ノー・スプレッドで「枕の下に入れてよいか?」と尋ねる(イエス・ノー・スプレッドについては前回のニュースレターでいろいろな方法を紹介しています)。もしイエスなら枕の下に入れてよい、ノーならしない。あるいはイエス/ノー・スプレッド以外の方法でリーディングを行った方がよいと感じれば、そうしてください。
自分の心を空にして、カードの声を聞く。なんとなくの印象でいいので「嫌がっていそう」「全然大丈夫!と言っていそう」と感じ取り、その感覚に従ってください。場合によっては、なんらかの代案をカードが提示してくることもあります(例えば、封筒に入れたり、布で包めば枕の下に入れてよい、など)。
これはデッキ全体の意思ではなく、その一枚のカードの声です。カードによって意見は変わりますから、毎晩カードが変わるごとにその声を確認してください。このときのカードの反応の印象も、カードの理解につながります。
カードによっては非常に多くの要求をしてくる場合があります。もしあなたがそれを実行できるなら、カードの言う通りにしても構いません。しかしカードが「枕の下にいれてほしくない」と拒否できるように、あなたもカードの要求をきっぱり拒否できることを忘れないでください(「めんどくさいからヤダ」もアリです)。もしなにか問題があれば、その晩のワークは中止しましょう。その夜に見る夢は一切タロットと関係のないものです。朝起きたら、あなたもカードも昨夜の問題については忘れています。
枕の下に入れないことにした場合は、選んだカード一枚を残りのデッキとは分け、枕元や寝床になるべく近くて安全で、カードの存在をあなたが感じられる場所に置いてください。
3.カードのヒントを夢で見る、と意識しながら眠りましょう
カードと自分のつながりを感じましょう。普段夢を見ない人でも、こう意識することで意外と思い出せるものです。枕元には見た夢をメモする紙とペンを忘れずに!
4.起きたら、夢を書き留め、カードと結びつけます
まずはメモです。カードと関係なさそうに見える夢も、覚えているものはすべてメモしておきましょう。もしなにも思い出せなかったら、夢から得られる情報はありませんが、昨夜のカードとのやり取りやつながりの意識は収穫となっています。また自覚できなくとも、無意識のうちに多くのものを得ています。
基本的にはカードやそこに描かれた人物そのものが夢に出てくることは少ないでしょう。でも、もし直接登場したなら、そのときの発言や振る舞い、出来事からカードの特徴をリストアップしてください。
カードと関係ない夢に見える場合、そこに登場した情景や人物たちの言動から特徴をリストアップしてください。複数の人物が(あなた自身の主観となった人物も含めて)登場する場合は、それらはカードの特徴がそれぞれの人物に分割されたと考えます。どの人物の振る舞いも、そのカードの側面を示しています。
リストアップした特徴と、カードを見比べ、さらに発見や印象があれば付け加えます。無理にあれこれ想像して考えず、自然に浮かんできたものだけをすくい取り、そのカードのライフストーリー、プロフィールをデッサンしていきます。なにも浮かばなければそれで終わりで構いません。
それだけで十分ですが、もしそこからなんらかのメッセージを自然に感じ取れたならば、それも言葉にしておきましょう。
例)ワークに使ったカード:女教皇
見た夢:「建設中の木造家屋、屋根の角の部分を見ている。木材同士が複雑な形でかみ合うよう、継ぎ手加工されガッチリ組み合っている」「水棲の妖怪?でカエル人間のようなものがいる」
木材の継ぎ手とカエル人間、まったく関係ないようですが、「木材と木材」「カエルと人間」が分かちがたく噛み合わさっている、という共通点があるように感じました。ひとまず特徴リストに「何かと何かを噛み合わせること」とメモしました。
それからカードを見ると、彼女の周りにはバイオリンが浮かんでいて、頭には右側だけ鹿の角が生えていて、側に脱げた帽子があります。角の生えた頭は、カエル人間と同様、「鹿と人間」が噛み合ったキメラ的存在に感じます。帽子はその角を隠していたが、今は脱げたのかもしれない。しかしバイオリンの方は、彼女と分かちがたく噛み合っていたもののように感じます。
こういったことから印象を受け取って、
バイオリニストだった
演奏すると振動で頭蓋骨が隆起し、角が生えていく病気になった
角は帽子で隠していたが、最終的には自分がキメラになることを受け入れた
2つのものを固く噛み合わせることに関係。人間と自然との融合
という、彼女のライフストーリー、プロフィールのメモとなりました。自分は彼女から「自分の創造性の発揮によって、自分自身がキメラになっていくことを恐れなくてもいい」というメッセージを受け取りました。これは一般的な「女教皇」としてカードをとらえていたら、きっと引き出せなかったものでしょう。
このワークは無理してやるものではありません。またメモを取るときも、頭をひねって考え出すのではなく、心を空にしてただ浮かんでくるものをすくい上げるようにしましょう。ここで紹介した手順を守るよりも、カードの声を聞くことの方が大事です。大きな収穫がないように見えても、カードとあなたのつながりは強まっています。
6/7追記:twitterでこのワークをやってくださる方を何人か確認したので、一応ハッシュタグを作っておきますね。使ってもいいし、使わなくても構いません。 #夢でタロットに
10/2追記:このワークを実際にやってみて検証した記事
古事記スプレッド〈神生み〉
さて! 古事記スプレッド第三弾です。前回の創造の失敗から一転し、ここでは多くの創造が行われます。今回のスプレッドはあなたが創造したり、与えたりできるものとして読み解いていきます。
天つ神のおっしゃるとおり、イザナギノミコトから声をかけて結婚をやり直したお二方は、次々と島や国、神々をお生みになりました。火の神ヒノヤギハヤオノカミが生まれたとき、イザナミノミコトは御陰が焼かれてご病気になり、その嘔吐や尿や大便からも神々が出現しました。
古事記スプレッド〈国生み その二〉
1.オオコトオシオ:あなたが大仕事を成す力
2.イワツチヒコら、住居の神々:あなたが作る安全な場所
3.オオワタツミら、海や密の神々:あなたが与える命
4.オオヤマツミら、山や野の神々:あなたが与える活動の場
5.シナツヒコ、風の神:あなたが起こす風
6.アマノサギリら、霧や惑いの神々:あなたが与える神秘や謎
7.ヒノヤギハヤオ、火の神:あなたが与える熱と光
8.カナヤマヒコら、鉱山や粘土の神々:あなたのもの作りの力
9.ワクムスヒら、濃厚の神々:あなたの生産の力
10.トヨウケヒメ、食物や豊穣の神:そこから生まれる恵み
この場面はとても大勢の神様が登場し、スプレッドにまとめるためかなり省略があります。もし本格的に古事記をタロットで辿りたい方は、古事記を読んで一柱一柱の神様ごとにカードを一枚引いてもおもしろいかもしれません(下記参考にある國學院大學の「古事記ビューアー」がオンラインで読みやすいです)。
前回の古事記スプレッドはこちらに。
twitterハッシュタグ #古事記スプレッド でみなさんのリーディングを投稿していただいています。それぞれの古事記、大変興味深い!
参考:
武田祐吉訳注、中村啓信補訂・解説「新訂 古事記」(訓読文、現代語訳両方が入ってわかりやすい)
國學院大學 古事記ビューアー(原文、訓読文、現代語訳、註釈、英語訳が自由に2画面表示でき便利。特に註釈が圧巻!)
最近の活動
●6/6月は二十四節気「芒種」です。二十四節気の魔法の水のワークをどうぞ。
●7/6水19:30よりメアリー・K・グリーア「タロットワークブック」zoom読書会です。タロットサークル内の活動ですが、メンバー外の方で参加希望の方はお知らせください。本がない、英語版しか持っていない、途中参加の方もどうぞ。
絶版本ですが、この本の復刊のリクエストはこちらからできます。
●6月に入りましたので、まもなく「2022年下半期の運勢」をリリース予定です。お楽しみに!
●ご質問、ご感想、ご要望などはこのメールへの返信、あるいはtwitterのリプライなどでどうぞ。
今週のゾンビタロットチャレンジ
6/6〜6/12のあなたの運勢は?
今回引いたカードは「運命の輪」。ルーレットに貼り付けられたゾンビ、ナイフは彼女を避けて飛ぶ。キーワードは「今週のラッキー」。
このカードから作られたスプレッドで、あなたの一週間を占おう!
それではみなさまよい一週間を!
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