タロットのコスモロジー、これまでのまとめ
以前、ホドロフスキーの「タロットに充電する」というお話を書きました。
もしタロットをセラピー的な手段として用いようと望むなら、タロットに我々の深い主観性を付与しなければならない。そのためにはタロットを携帯電話と同じように用いる。携帯電話にバッテリーが残っていなければ役に立たず、それを機能させるためには充電をしなければならない。タロットカードも同じである。これらのシンボルは決まった何かを語るわけではない。我々があらゆる意味によって豊かにし、それらの容器にあふれんばかりに中身を与えなければならない。(中略)アルカナをしっかりと「充電」するためには、それらを全体として眺めるのと同時に、ごく細部にまで目を向けていくことを学ばなければならない。(「タロットの宇宙」)
この「全体として眺めるのと同時に、ごく細部にまで目を向けていく」ための材料として、自分は「タロットのコスモロジー」をまとめることにしました。これは自分の造語ですが、タロット全体をどんな宇宙として捉えるのか、どのような体型としてカード同士を有機的な関係でつなぎ合わせるか、その構造についてをこの言葉で指しています。
いくつかの例として過去の記事で「九進法のコスモロジー」「十進法のコスモロジー」「円形のコスモロジー」を紹介し、それを使ってどうカード同士を比較検証していくかの実践の一部を書きました。
この比較検証作業こそが、タロットの充電につながると自分は信じています。実際には、通常のリーディングの中でもこの行為をすることは可能です(例えばスプレッドのこのポジションにでたカードと、別のポジションに出たカードの比較を自然に行っているリーダーさんもいらっしゃると思います)。しかしそれを全カードにおいて行うのがコスモロジーを使った作業になります。
特にこの作業はマルセイユ、ウェイト=スミス、トートといった主流ではない、現代的なデッキを使っている方にとっては、自分のデッキを深く探索する重要なワークになるはずです。もちろん主流デッキにとっても重要な作業ですが、しっかりとした研究がされていないデッキは、使い手がそれをやってあげなければ他に情報がないため、より重要です。コスモロジーはそのガイドラインとして役に立つものです。
ある一つのコスモロジーを使って全てのカードを比較検証するにはかなり時間がかかりますが、できるところだけやってみるのでも全然違うと思います。あるカードのコンビネーションについて探索すれば、他のカードに対しての認識の深さにもつながっていくはずです。
まだここで紹介できていないコスモロジーとして「七進法」「二進法」「カバラ生命の樹」「上昇と下降」「男女関係の諸相」「足して21になる」「3つの六芒星」などの存在を確認しています。これらは過去の偉大なタロッティストの研究や、伝統の中にあるものです。並べてみると結構多いし、まだ別のものが発見される可能性もあります。
「タロットの充電」とはタロットそのものをよく見ることと、それについてよく考えることで行われますが、コスモロジーを使った作業は非常に強力なエネルギーの充電になるでしょう。
noteではタロットのコスモロジーについても改めて紹介しなおしていければと思っています。できればより活用しやすい形に。
サビアンシンボルのタロットワーク
牡羊座19度「東洋的なイメージの『魔法のじゅうたん』」
ルディアによればこれは「クリエイティブな想像力の使用」の度数です。社会的競争や過剰生産への慌ただしい関与を拒否する生き方は、執着のない超越的な知覚の発展を可能にします。じゅうたんは想像力の偉大な飛翔と超物理的な近くのための手段に変わり、夢の中で現在の社会状況全体を見渡す可能性を与えます。
空飛ぶじゅうたんは乗っている人を地上への執着から切り離し、想像力を飛翔させる役割を持っているようです。
この度数は自分の出生図の木星があるサビアンシンボルです。現在の自分の木星がどのように働いているのかを知ることもできるかもしれません。
スプレッドはこのように。
横位置の1と2は逆位置を取りません。じゅうたんは乗り手を地上世界から切り離し、そこに固執はありません。乗り手のカードはどのような想像力が使用されているのかが示されるでしょう。
引いたカードはこちら。
1.地上世界:カップ6 地上では感情の交流が行われています。感情交流が社会的競争や過剰生産になっているが、それに固執せず切り離されている。地上世界に閉ざされた感情的人間関係からの浮遊。
2.じゅうたん:ペンタエース 物質のエネルギーのはじまり。1と2の逆位置は取らないとしましたが、互い違いに出ているところに摩擦は感じます。絵からは「自分の手の上に乗っている」というイメージも。これは地上からは浮き上がっている、けれどもペンタクルはそもそも地のエレメントであり、地面から浮遊している地のエレメントは矛盾を感じる存在です。しかし地上では新たな地のエネルギーがはじめられないので、空中でそれをスタートさせているのでしょうか。
3.乗り手:ペンタクイーン逆 再びペンタクル、地のエネルギーを育むクイーンがひっくり返っている。「空中で地のエネルギーは育てられない!」ということでしょうか。もしくは非物質的なエネルギーについての想像力が発揮されている。そもそも想像力は実現しているかどうかに関係ないので、非物質的なものと言えます。
乗り手とじゅうたんのエネルギーが葛藤を起こしているようにも見えます。エースで新たな物質的エネルギーが始まったものの、クイーンはそれを育てていけない、むしろそれを否定している様子。じゅうたん自体が地のエレメントなのに空中にいるという矛盾ある存在。ペンタクイーンは空中じゃなく地に足つけている方が落ち着けそう。地上からじゅうたんに誘拐されたクイーンのようでもあります。
しかし地上ではエースの力が抑えられ、クイーンは「昔ながらの物質的・社会的価値を地上の感情的人間社会の中で育てる」ことになります。これでは確かに牡羊座っぽくはない。つまりここでは「新しく始める」というエースの力が重要であり、始まったものが育とうが育つまいが関係ないという乗り手の意志がある訳です。あるいは乗り手がどうなろうがじゅうたんが飛んでさえいればよい。
もしクイーンが誘拐されたならそれは地上世界からの人質です。クイーンがいなくなった地上では、物質的エネルギーが育たなくなりただ感情がやりとりされるだけになってしまうのでは? ということはじゅうたんは乗り手にだけではなく、地上にも「物質的価値観(ペンタ)ではなく想像力(カップ)を!」というメッセージを伝える使者でもあった?
牡羊座のエレメントは火なので、どの度数もなんらかの形で火の影響下にある、と考えてもいいかもしれません。タロットだと火はワンドです。この場にワンドのカードは出ていませんが、ワンド的な意味合いをどこかにはらんでいると読むこともできます。この場合、地上世界は火から切られる水と見るのがスムーズ。ペンタエースにはワンド的なエネルギーを見てもいいかもしれません。
また絵を見てみると、カップ6もペンタクイーンも「手首がないゾンビ」が登場しています。ペンタエースは手首だけの絵なので、他の2枚の欠損を埋めるもの、架け橋となるものでもあります。カップ6にはちぎれた手首が天を目指して落ちており、この手首が飛んでいってエースになった、という連想も可能です。そうだとすると人間少女にべったり抱かれているゾンビ少年がそれを切り離したいという意図を持って手を飛ばしたとも考えられます。なんだかロケットパンチっぽい。
●木星の働きとして見るなら、「感情交流からは切り離され、育てるのではなく始めること」が発展・拡大していくことに。またこの木星は地上での物質的価値の育成を拒否していくことにも発展性を持っています。「人の気持ちに配慮せずとにかく始めろ、後は知らん、非物質的な想像力を発揮せよ!」の発展。
●サビアンシンボルのタロットワークも、コスモロジーと同様「タロットの充電」作業になっているのがおわかりでしょうか。また同時にこれは「サビアンシンボルの充電」の作業でもあるでしょう。
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