18世紀フランスのタロット研究家エテイヤ(ジャン=バティスト・アリエット)は、世界初のプロのタロット占い師として知られています。そして歴史上で初めて、タロットと占星術を体系的に統合した人物でもあります。
以前、「タロットと占星術の対応、いろいろ」の記事でも、エテイヤのタロット・占星術対応を紹介しました。しかしエテイヤは、このような対応を使って一体なにをやっていたのでしょうか?
エテイヤの方法は、タロットを引くことで擬似的なホロスコープを作り、それをホラリー占星術のルールで読むというものです。
ホラリーとは、質問をした瞬間のチャートを作成し解釈する、由緒ある占星術の技法です。
エテイヤの時代はコンピュータがないため、占星術師は天文データを調べ手計算でチャートを作っていました。これには時間もかかるため、タロットでの擬似チャートは簡易的な代用にできたようです。また、複雑な計算でチャートを作成するよりも、安価な代替手段として提供されていたかもしれません。ホラリーチャートを作るショートカットとしてタロットを使ったのです。
ただし、現代では占星術アプリでチャートを立てた方が手っ取り早いです。そしてこの技法を使うには(かなり簡略化されているとはいえ)ホラリー占星術の知識も必要です。それだったら実際のチャートを立てて普通にホラリーとして読んだらいいんじゃない?という感じもあります。
そのため、今回ご紹介する方法は現在でもそのまま有用性があるかどうかはわかりません。しかし占星術とタロットの関連に興味のあるリーダーにとっては、いろいろなヒントが見つかるのではないでしょうか。
エテイヤの占星術の方法
質問を立てる。
12サインに対応するカードを取り出し、現在の太陽サインを1ハウスとする配置に並べる。
残りのカードをシャッフルし、1ハウスから12ハウスにかけて1枚ずつ並べる。すべてのカードが配置されるまで繰り返す。
質問に関連するハウスを決め、そのハウスに置かれたカードをリーディングする。
各ハウスの山を確認し、どのハウスに天体対応のカードがあるかを確認。その位置からチャートを作成する。
できたチャートを占星術の手法で解釈する。
それでは実際にやってみましょう! ちなみに、TAZNはホラリー占星術についてはあまり詳しくないため、占星術的な読み解きについては参考になさらないでください。
1.質問を立てる。
「今年から来年にかけてどう仕事を進めるのがいいか?」とします。
2.12サインに対応するカードを取り出し、現在の太陽サインを1ハウスとする配置に並べる。
エテイヤの12サインに対応するカードは以下の通り。ナンバリングはエテイヤのデッキ特有のものです。
牡羊座:1教皇
牡牛座:2太陽
双子座:3月
蟹座 :4星
獅子座:5世界
乙女座:6皇帝
天秤座:7女帝
蠍座 :8女教皇
射手座:9正義
山羊座:10節制
水瓶座:11力
魚座 :12吊られた男
今、太陽は射手座にいます。エテイヤのシステムでは射手座は正義です。一番左の下のカードが1ハウス射手座で、そこから反時計回りに12ハウス山羊座まで並べます。
ここはエテイヤ作のタロット・デッキ「グラン・エテイヤ」を使いたいところですが、今日はカモワン版でやってみましょう。
この形は現在でも「ホロスコープ・スプレッド」と呼ばれているものと似た配置ですね。
3.残りのカードをシャッフルし、1ハウスから12ハウスにかけて1枚ずつ並べる。すべてのカードが配置されるまで繰り返す。
タロットのカード枚数は12で割り切れないため、最後のカードは6ハウスに置かれて終わります。各ハウスに5枚か6枚のカードが置かれます。
すべてのカードの配置をメモしていくと、このようになりました(カードの略号はゾンビタロット流になっています)。
コインの数札はあとで天体として使うので、マークしてあります。
4.質問に関連するハウスを決め、そのハウスに置かれたカードをリーディングする。
仕事に関連するのは6ハウスです。6ハウスのカードはこのように。
ちなみに太陽のカードは牡牛座のサインを表すものです。これは特に読まないよう。
せっかくなので、エテイヤによるカードのキーワードを見てみます。
バトン6:家事、家内労働者、使用人、従者、使者
戦車:訴訟
コイン6:いまだ! 周囲の環境、助手、目撃者、油断のない、慎重な、用心深い
カップ3:慰め、安堵、治癒、成功、癒やし、勝利、完成、幸せな結末
バトン5:富、裕福、黄金、光輝、豊穣、贅沢、輝き
ソード9:牧師、司祭、尼僧、処女、修道生活を送る人、聖職者、世捨て人、未婚者
現在の一般的なカードの意味とは、似ているものもあればそうでもないものもありますね。
ざっくり全体を読んでみると・・・
「助手や従者を使いつつ、世捨て人的に、慰めと癒やしを持ち、輝き、そして訴訟・・・!」
エテイヤのキーワードにこだわらず、自分なりに読んでみます。
「人からの評価を気にしながらも自分を押し出し、労力にはきちんと対価を発生させる。感情を豊かに発展させ、自分の存在価値をぶつけ、答えのない問いを考え続けるように仕事する」
二枚の6のカードに、7戦車が挟まれているのもおもしろい点。6と6を従える7(エテイヤのデッキだと、戦車は7ではないのですが)。
そして後半はすべて奇数が並びます。3、5、7、9と、1以外の奇数が勢揃い。
5.各ハウスの山を確認し、どのハウスに天体対応のカードがあるかを確認。その位置からチャートを作成する。
エテイヤのシステムでは、コインのスートの数字札が天体や感受点に対応します。
太陽:コインのA
水星:コインの2
金星:コインの3
月 :コインの4
火星:コインの5
木星:コインの6
土星:コインの7
ドラゴンヘッド:コインの8
ドラゴンテール:コインの9
POF(パート・オブ・フォーチューン):コインの10
どのハウスにコインの数札があるかをチェックし、チャートに書き込んでいきます。
このようになりました。タロットがホロスコープに変換された!
実際の占星術チャートでは、ドラゴンヘッドとテールは必ずオポジションになりますが、この技法ではならなくてもそのまま読んでしまいます。現実にはありえないチャートも読んでしまうのがおもしろいところです。
6.できたチャートを占星術の手法で解釈する。
エテイヤの解説では、いくつか注目すべきポイントがあります。ここでは主要なものだけ見ていきます。
・質問に関連するハウスと、そのサインの支配星
仕事に関わる6ハウスを見ると、木星があります。なんだか発展しそう・・・ですが、6ハウスの木星は衰弱のため、少し頑張らないと発展しにくいかもしれない。
6ハウスは牡牛座、その支配星である金星が質問の主題を支配します。金星は4ハウス魚座にいて、金星は魚座で高揚。家でイキイキ仕事して、楽しそうな感じです。しかし金星は4ハウスでは衰弱してもいて、やや居心地の悪さも。家にいるだけで仕事になるの?みたいな。
金星はパート・オブ・フォーチューンと一緒におり、チャンスもありそう。パート・オブ・フォーチューンはコンフォートゾーンも示しているので、仕事をするにおいて家は安全地帯。
自分は今も在宅で仕事をしているので、これは現状維持という感じです。
・質問者のシグニフィケイターとなる天体(男性太陽、女性月、とされている)
自分は男性なので、太陽が質問者のシグニフィケイターとなります(ノンバイナリーの人はどうするの?というのはエテイヤの時代には考慮されていません…が、その場合は自分を象徴していると感じられる天体を選んで使うとよいのかも。あるいは中性を示す水星とか)。
太陽は7ハウス双子座に。対人関係に関わり、コミュニケーションも活発そうです。ただし、太陽は7ハウスで衰弱、結構がんばらないとならない。ひと目を気にしすぎると自分がなくなる。
金星との関係では、太陽は90度でスクエアのアスペクト、緊張関係にあります。仕事は家でイキイキやってるけど、自分自身は対人関係をやっていて、そこに摩擦がある・・・家で仕事したいけど他者に自分をアピールもしなきゃならない、という葛藤。
家で仕事しているだけでは、楽しいけれど引きこもりになってしまう(現にほぼそうなってる…)、外で人にも会わないとね、というメッセージと受け取りました。
・4ハウス
4ハウスは問題の始まりと終わり、問題の核心も表し、どのケースでも検証されるべき場所とされます。質問に関連する金星がここにあるので、結果はより迅速に顕著になる様子。パート・オブ・フォーチューンの幸運も強まったらいい!
・3つ以上天体や感受点のあるハウス
天体や感受点(コインの数札)が3枚以上あったハウスにも注目。3ハウスと8ハウスに3枚あるので、この領域がアクティブになります。コミュニケーションや共有資産が仕事に強く影響を与えていく。ここにはドラゴンヘッドとテールもあって、過去のコミュニケーション、未来の共有財産、とも言えそうです。
3ハウスでは水星とドラゴンテールが良い品位を受けており、コミュニケーションは特に活発。水瓶座なので、みんなでフラットにコミュニケーションが行われている。火星もあってここにやる気を感じてしまいそう。
8ハウスの蟹座、月は蟹座のドミサイルなので元気。同時に蟹座で木星は衰弱。仕事において私的なことが強まり、社会的な要素が弱い、と考えればいいでしょうか。規律によって成果を出していくことには多大な努力が必要で、私情に流されやすそうです。家で楽しく仕事している金星ともトラインのアスペクトで仲良し、仕事というよりプライベート感が強まります。そこに横から土星が「仕事してよ〜」と弱々しく訴えている感じ。それでも規律はなくはない。
・アングルのハウス(1、4、7、10)の天体
4ハウスに金星、7ハウスに太陽、質問と質問者のシグニフィケイターがあります。そしてパート・オブ・フォーチューンも。これらも顕著に現れることになります。仕事そのものと自分自身の存在、そして幸運が目立っていくようです。
・元素のバランス
全体に水のエレメントが多く、次に風も多い。土は一つだけ、火はゼロ。感情面、知性面にフォーカスした仕事をしていく様子です。
まとめてみる
…こうして見ていくと、本当に自分の現状を表していると感じます。
家で仕事していて楽しいが、仕事がプライベートな活動にもなっちゃっている。
人に会いに行っての対人コミュニケーションに弱気、だがその必要性も感じている。
でも水瓶座的なみんなとのコミュニケーションにはやる気があって活発。
質問は「今年から来年にかけてどう仕事を進めるのがいいか?」だったので、現状から大きく変える必要はない、ということかもしれませんが、ウィークポイントがいくつか出てきたので、そこに注意を払うこともできると感じました。
他にも、オポジションの関係や、新月や満月、月食や日食が起きていないか、月と太陽のアスペクト、その他のアスペクトも確認していきます。
もう一度、6ハウスのカードを見直してみます。チャートにあった金星と太陽の葛藤は、二枚の6とその間にある戦車にあらわれているようにも感じます。ワンド6が7ハウス太陽ぽく、ペンタ6が4ハウス金星ぽく、それらを両輪として戦車を走らせねばならぬ、というように。
もしかしたら
自分のイメージしていた「仕事」については、6ハウスじゃなく10ハウスを見た方が良かったのかも?と後になって思いました。そうなると、金星ではなく水星が質問の主題を支配し、3ハウスのコミュニケーションの分野でがんばる、ということになります。もうちょっとホラリーも勉強してみます…。
実際にやってみて
タロット占いの最初期の段階で、占星術とタロットがこれほど高度に結び付けられていたのだとわかり驚きました。エテイヤがこうした技法を考案したことで、後世のタロット研究家たちが占星術とタロットのつながりを様々に考えていくきっかけになった、と考えると、エテイヤの仕事の歴史的重要性も感じます。そして、占星術がタロット占いに与えてきた影響の大きさも感じました。
本物のホラリーに比べたらかなり簡略化されると思うので、このタロットを使った技法から練習してみる、とかもできるのかもしれません(ただ、本物のホラリーをやっている人からみたら「なんじゃそりゃ」と思われる可能性もある…)。
応用としては、エテイヤの占星術対応ではなく、他の対応システム(例えば黄金の夜明け団など)を使うこともできそうです。トート・タロットなど、カードに占星術記号が書いてあるデッキも使いやすそう。チャートに書き起こす手間を省いて、カードを並べるだけでも読めるのでは。
また、タロット→ホロスコープ、ができるのであれば、ホロスコープ→タロット、という反対の変換もできるのでは? タロットを読むのは得意だけど占星術苦手…という方も、チャートをカードに置き換えてリーディングしてみるのもおもしろいかもしれません。他にもいろいろ応用が考えられそうです。
参考資料
今回の記事は、エリザベス・M・ヘイゼル&ジェームス・W・リバークによるこちらのサイトを参考にさせていただきました。
エテイヤのカードのキーワードについては、アンソニー・ルイス「タロット事典」より。
今回のリーディングにトライしてみて、改めていけだ笑み「ホラリー占星術」も読み直してみようと思いました。
今回の自分のリーディングは怪しいところが多いので、コメント欄を開けておきます。詳しい方のツッコミお待ちしております。
最近の活動
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