こんにちは、TAZNです。
タロットのコートカード(人物カード)は、
・キング(王)
・クイーン(女王)
・ナイト(騎士)
・ペイジ(小姓)
の4枚であることが一般的です。
でもときどき、「プリンス」や「プリンセス」というカードが現れるデッキもあります。
これは一体どういうものなのでしょうか? これを理解するために、今日はコートカードの歴史について辿ってみたいと思います。
マルセイユ版の時代(15世紀後半)
伝統的なタロットデッキ、マルセイユ・タロットは15世紀後半頃に生まれ、18世紀までタロットの主流でした。
このときコートカードの名前は、
キング/クイーン/ナイト/ペイジ
でした(実際はフランス語で表記されますが、ここでは便宜上、英語表記にします)。
コートカードには階級の序列があります。つまり「どのカードが一番偉いか?」です。
マルセイユ・タロットの序列は、偉い順に
キング/クイーン/ナイト/ペイジ
です。当時の貴族の階級がそのまま、カードの序列にも反映されています。
この名前と序列は、今でも一般的に使われているものですね。
黄金の夜明け団(19世紀末)
黄金の夜明け団(以下GD)は19世紀末イギリスで設立された魔術結社です。タロットを魔術における重要な要素として扱い、タロットに関する様々な知識を考案。後世にも大きな影響を与えました。
GDはコートカードの真の姿として、名称・役割を再設定します。
キング→プリンス(王子)
クイーン→クイーン(女王)
ナイト→キング(王)
ペイジ→プリンス(王女)
そして序列を、
キング(元のナイト)/クイーン/プリンス(元のキング)/プリンス(元のペイジ)
に並べ替えます。
キングという名前のカードが最上位であることはマルセイユ・タロットと同じですが、GDのキングは実際には元々ナイトと呼ばれていたものです。
また、GDは各コートカードに「レガリア(王族の所持品や衣装、付属物)」を設定します。例えばキング(元のナイト)は馬に乗っていて、プリンス(元のキング)は戦車に座っている、などです。
こうしたコートカードの新たな設定は秘密の知識とされ、団外で公言することは固く禁じられました。GDの知識をしっかり反映するタロットデッキも、20世紀後半になるまで一般に発売されることはなかったのです。
ウェイト=スミス版(1910年)
GDのメンバーであったウェイト博士と画家パメラ・スミスの手によって、ウェイト=スミス版(ライダー版)が作られました。
ウェイト博士はGDの知識を尊重していましたが、このデッキは一般に向けて発売されるものです。団内の秘密の知識をあからさまに盛り込んでは禁を犯すことになります。
おそらくそうした理由で、コートカードはマルセイユ版の名称・序列に戻されます。
これは現代でも一般的なデッキですし、伝統的なマルセイユ版とも一緒なので、コートカードもこのタイプが最もよく知られています。
トート版(1938-1942年制作、1960年代後半出版)
その後、魔術師であるアレイスター・クロウリーが、レディ・フリーダ・ハリスの絵によってトート・タロットを作成します。
クロウリーは一時期GDのメンバーでしたが離反しました。そのためGDの団外公言禁止のルールは尊重していません。
クロウリーはGDのコートカードのシステムを流用しつつ、変更を加えました。
GDのキング(元のナイト)→ナイト
GDのクイーン→クイーン
GDのプリンス(元のキング)→プリンス
GDのプリンセス(元のペイジ)→プリンセス
GDが変更した元々ナイトだったキングを、ナイトの名称に戻したのです。
そして序列は、
ナイト/クイーン/プリンス/プリンセス
としました。ナイトの名前はマルセイユ版に戻っていても、序列としてはGDと同じく一番上位のものになっています。
また絵を見ると、GDの設定した各コートカードのレガリアがある程度盛り込まれているのもわかります。
ウェイト=スミス版ほどではありませんが、トート・タロットもかなり普及したため、このコートカードのタイプも受け継がれています。
しかし実はウェイト=スミス版も…?
さきほど、ウェイト=スミス版はマルセイユ版のコートカードシステムに戻された、と書きました。
しかしウェイト博士が残したヒントを探ると、実はウェイト=スミス版の序列も
ナイト/クイーン/キング/ペイジ
ではないか、という裏設定を読み取ることもできます。名称は違えど、これはGDの設定した序列と同じものです。
例えばカードに描かれたレガリアを見るとGDの設定と近い部分があります。またウェイト博士の書いた本でも、キングよりナイトの方が年長者だと扱われています。
公言禁止のGDの知識をこっそりと隠したのでは、と推測もできます。
ウェイト博士の隠された意図を考慮すると、ウェイト=スミス版でもナイトを最上位のカードとして扱う、という使用方法もあるかもしれませんね。
プリンスとプリンセスはどう扱う?
基本的にはプリンスは主流のコートカードシステムにおけるナイト相当、プリンセスはペイジ相当、として扱ってよいと思います。
また、プリンスとプリンセスがあるデッキの中にも、GDの知識を由来とするものと、トートの知識を由来とするものがあります。デッキにキングがあるものはGD由来、ナイトがあるものはトート由来と考えられます。源流となるデッキの知識を参照するのもよいでしょう。
ただ、あえてこうした起源をぼかしたり、レガリアを入れ替えて由来を曖昧にするデッキもあります。こうした場合はそのデッキそのものと向き合って対話するのが一番です。
他にもいろいろ
こうした歴史的変遷とは別に、男尊女卑への抵抗としてクイーンを序列の最上位に置くデッキもあります。またコートカードの階級システムを社会的格差の象徴だと否定し、斬新な改変を行うデッキがあったりもします。
コートカードも時代や考え方によって変化があったことがわかりますね。
参考文献
イスラエル・リガルディー「黄金の夜明け魔法大系(2)黄金の夜明け魔術全書(下)」
チック・シセロ+サンドラ・タバサ・シセロ「現代魔術の源流[黄金の夜明け団]入門
ゴッドフリー・ダイソン「黄金の夜明け団の秘教哲学 ヘルメティック・タロット」
Correspondence Between Knights Princes Kings and Knights Between Decks
最近の活動
記事が長くなったのでこちらは簡潔に。
・タロット練習会
10/15(日)13:00-、灯台屋さんにて。人を占う練習をしたい方へ。人と一緒に占うことの驚きと楽しみが実感できます。
・タイツタロットミーティング
10/22(日)13:00-、タイツタロットをお持ちの方で集まろう! ツイキャスプレミア配信で開催です。小アルカナのミニ講座とリーディング練習会。
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10/28(土)13:00-、灯台屋さんにて。占星術の知識をいかにタロットリーディングへ活用するかをお伝えします。占星術初心者でも大丈夫です。
・タイツタロットの小アルカナ
毎日タイッツーにて一日一枚描いております。明日のカードでついに小アルカナは半分終了!
・タイツタロット販売中
TAZN作のタロットデッキ!
・タイツプチ#1 サークル参加
10/28(土)。スペース番号は「た6」。タイツタロットに関するグッズ販売の予定(参加規約によりタイッツー以外でイベントリンク貼れないので、興味ある方は探してください。前回の号で間違って貼っちゃったのですが削除しました)。
・ルディア占星術のマンダラ読書会
10/11(水)19:30-、サビアンシンボルの原典の一冊、ディーン・ルディア「An Astrological Mandala」を日本語訳で読むzoom読書会。
・メアリー・K・グリーア「タロットワークブック」zoom読書会
11/15(水)19:30-。ご興味ある方はお問い合わせください。本がなくてもOKです。
・新月の問い満月の答え
10/15(日)は新月です。
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